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■葛飾北斎■浮世絵師■生涯前進し続けた浮世絵師

□北斎を知るおすすめ作品

▼海外での高い評価
葛飾北斎(かつしか・ほくさい)は、日本国内はもちろんですが、海外で特に評価が高い人物です。
アメリカの雑誌「ライフ」で1999年に「この1000年で最も重要な功績を残した世界の人物100人」に日本人でただ一人選ばれました。


もっと知りたい葛飾北斎 生涯と作品(アート・ビギナーズ・コレクション)
森羅万象あらゆるものを描いたといわれる北斎の生涯とその作品


印象派や印象派後のゴッホなどの画家に多大な影響を与えたといわれています。

またドビュッシーの交響詩「海」は、北斎の代表作「富嶽三十六景」の「神奈川沖浪裏」にインスピレーションを受けたといわれています。

大胆な構図と独自の色彩感覚は、世界に大きな衝撃を与え、海外でも非常に高く評価をされています。


▼常に変化を求める「引越し90回、改号30回」

北斎は、生涯に93回の引越しと改号30回をしたといわれます。

引越し93回は、絵を描くことに集中し、部屋が汚れたら引越しした結果で、改号30回は、弟子に号を売って収入を得ていたからだといわれますが、私は「常に(絵画の研究に)変化を求めた」北斎だったことも関係あると思います。

あらゆる画法を貪欲に取り入れた北斎は、浮世絵という範囲にとらわれない絵画の可能性を追求した画家でした。

なお、改号30回は、勝川派の門下に入り、「春朗」からスタートし、「北斎宗理」、「葛飾北斎」などを経て晩年には「画狂老人」、「卍」と号したといわれます。

晩年の「画狂老人」、「卍」の号は、奇人ともいわれた孤高の天才・北斎らしさを感じます。


▼元祖・漫画家

北斎は、「漫画」という言葉を創ったといわれます。

「北斎漫画」という画集を発表していますが、この画集は、デッサン集で、後の画家のデッサンの参考書となり得るものです。

書籍の挿絵も描いた時期がある北斎は、漫画という言葉の発明、「北斎漫画」の発表と合わせて
元祖・漫画家といってよいかもしれません。

天才・葛飾北斎の生涯と作品にスポットを当てた「もっと知りたい葛飾北斎 生涯と作品(アート・ビギナーズ・コレクション)

生涯前進続け上昇志向のあった葛飾北斎

▼科学が後追いする天才の証明

北斎もモーツァルト同様に現代科学が天才の証明をしました。

北斎の代表作「富嶽三十六景」の「神奈川沖浪裏」(神奈川沖波裏とも表記)は、北斎らしい波のしぶきを前面に配置した大胆な構図で知られています。

デフォルメが強いと思われた波のデッサンは、高速度カメラで撮影すると彼が描いた波の形になっています。

彼が確かな眼力で「時間を止めて、瞬間を切り取って描いた」ことになります。

天才の時間を止め、瞬間を切り取った能力は、科学によって後追いで証明されました。

(一方で、伊八(武志伊八郎伸由)の彫刻の波を参考にしたとも・・・)
(伊八については、北斎の大作「八方睨み鳳凰図」にも、伊八の龍の彫刻から影響があったとの指摘も・・・)

▼森羅万象を描いた画家
「富嶽三十六景」などの風景画が一般的に有名ですが、森羅万象あらゆるものを描き、生涯に3万点以上の作品を残し、浮世絵としての版画の他に肉筆画にも傑出していました。

70歳過ぎに発表した「富嶽百景」以後は、風景画の世界から離れ、静物画、伝説、動物画などを描くようになり、特に肉筆画に力を入れるようになります。

年齢とともに神技の領域に近づくと考えた北斎は、自身が考えるように、年齢を重ねて「画力」がますます冴え渡ってきたように思います。

創作意欲は、畳21畳の大作「八方睨み鳳凰図」の迫力などでも十分感じられますが、特に最晩年の絶筆に近い時期に描かれた自身を動物に投影したと思われる肉筆画の「雪中虎」と「富士越龍」は、個人的には北斎の最高傑作だと思います。

「雪中虎」で、雪を踏みしめながらもスキップするように歩む虎の肉体は、うねるような躍動感で、表情は微笑んでいるようにも見え、わずかに上を見つめ未来へ向かっているようです。

「富士越龍」は、北斎の画としては珍しい墨絵のようなタッチで富士山をバックに龍が富士山を越えるというより天へ上昇するように見える姿が描かれています。

いずれも最晩年にして非常に強い「未来への更なる上昇志向」が感じられます。


北斎は90歳で亡くなりますが、死の直前に
「あと10年、いや5年、生かしていただけるなら真の絵描きになれるのに」
と言ったといわれます。

まさに生涯前進し続けた北斎の絵への執念が感じられます。

□北斎を知るおすすめ作品



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